日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 環境・多様性・保全

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 G会場 (小会議室8)

10:00 〜 10:15

[G-20] 東日本大震災後の北上川水系におけるヒヌマイトトンボの保全と河口の昆虫相の変化

◯町田 禎之1、虻川 巧生2、溝田 浩二3 (1. (株)建設環境研究所、2. 北上川下流河川事務所、3. 宮城教育大学)

東北地方の太平洋側には絶滅危惧種であるヒヌマイトトンボMortonagrion hiroseiの生息地が複数あったが、震災後に確認されているのは分布北限の北上川水系に限られている。有名であった北上川河口のヒヌマイトトンボ生息地も津波と地盤沈下によって壊滅したが、被災域のモニタリング調査によって北上川の河口より上流、旧北上川にも本種が生き残っていることが分かった。北上川水系では震災後の復旧・復興事業にあたり、学識者と河川管理者からなる「北上川下流生物環境検討会」を設置し、貴重な汽水域の環境や生物を保全してきた。しかし、地震直後からの広域的な地盤上昇によって高水敷が乾燥化しているため、ヒヌマイトトンボ生息地の環境改善を平成27年から開始し、現在は河川協力団体の宮城昆虫地理研究会が主体となっている。ヒヌマイトトンボ生息地には、水圧と電気伝導率のロガーを設置し、冠水時間と塩分濃度のモニタリングを継続している。また、北上川河口については地盤沈下と津波によって砂州がほぼ消失し、生態系がリセットされた。北上川河口は震災前から「河川水辺の国勢調査」の対象地区としており、巨大地震の河口の生態系への影響と回復過程のモニタリングを継続している。以上の事例とこれまでの調査結果を紹介する。