日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 環境・多様性・保全

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 G会場 (小会議室8)

10:15 〜 10:30

[G-21] 昆虫採集体験から始める生態学入門―中高生に向けたネイチャーガイドと科学コミュニケーションの融合の試み―

◯矢崎 英盛1、沖田 耕一2 (1. 東京都立大学・動物生態、2. 聖光学院中学校高等学校)

自然科学への関心の裾野を広げることは、社会における科学への様々な誤解や疑似科学的言説の氾濫への対策としても不可欠である。その基盤としての自然の「原体験」の重要性は多く指摘されてきた一方、未成年者の自然体験の頻度は下降している現状がある。そうした自然体験の薄い層に対して、自然の魅力を効果的に伝える担い手として技術やスキルを習得した、ネイチャーガイドという存在がある。演者は蛾類の生態学的研究と並行してネイチャーガイドの活動経験を積み、身近に自然の魅力を体感するための格好の対象である昆虫を通じて、自然科学への理解・親しみの土台を自然観察会を通じて醸成しようとする試みを続けてきた。今回は2018年から実施している、横浜市の聖光学院中学校高等学校での昆虫採集を題材とした生態学の入門講座を取り上げる。日常的に自然に触れる経験をほとんど持たない生徒たちを対象に、昆虫を「手に取る」体験をきっかけとして、スケッチを中心とした定性的観察と、そこで喚起された着眼点に対する定量的分析を組み合わせた、自然科学の能動的探求の営みの一端を体感してもらうプログラムの実践について紹介する。