日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 系統・生物地理・進化・種分化

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 G会場 (小会議室8)

09:00 〜 09:15

[G-22] 同一河川に共存するモンカゲロウ属(カゲロウ目)2種の系統進化−近縁2種間における種分化と交雑の歴史−

◯竹中 將起1、岡本 聖矢2、東城 幸治1 (1. 信州大・理、2. 土木研・自然共生研究センター)

種の多様性は、継続的かつ動的な種分化の結果である.単純には1つの種が2つの種に分かれることを指すが,稀に生殖隔離が不完全な種分化の初期段階において,系統間や2種間での交雑由来の種分化も報告されている.また,過去の交雑による表現型進化の役割など,交雑は多様性創出機構の重要な要因である.日本列島に生息するフタスジモンカゲロウEphemera japonicaとモンカゲロウEphemera strigataは,同一河川(上流と中流に流程分布)において共存する姉妹種である.これら2種は,繁殖時期が大きく異なり,生殖前隔離は完全に成立しているが、これら2種を対象とした系統解析から、モンカゲロウの東日本集団は過去にフタスジモンカゲロウと交雑していることが明らかとなった.また,交雑由来の集団は,フタスジモンカゲロウの中でも独立した系統であり,雑種由来の種分化である可能性が高い.そのため、交雑がいかに生物多様性に寄与するのかを解明するために適した分類群である。そこで,この交雑由来の集団を中心に,生殖隔離の程度や,遺伝的多様性,生息環境など種分化に関わるデータを解析した。その結果、過去の気候変動の影響による交雑や,交雑後の生殖前隔離など興味深い結果が得られたので,ここに報告する.