日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 系統・生物地理・進化・種分化

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 G会場 (小会議室8)

09:30 〜 09:45

[G-24] 日本列島におけるAsiopodabrus属(甲虫目ジョウカイボン科)の種多様化プロセス

◯中村 涼1、池田 紘士 1、久保田 耕平1 (1. 東大院・農)

甲虫の種多様化要因は、さまざまなニッチへの適応や、飛翔能力の退化による異所的種分化の促進という説が提唱されているが、それらでは多様化要因を説明できない種多様なグループも多い。Asiopodabrus属は、日本に176種、国外に17種の既知種が産する、日本列島で特に多様化したと考えられるグループで、全ての種が飛翔能力をもち、食性やハビタット、繁殖時期といった種間のニッチの分化も乏しい。演者らは、網羅的な野外サンプリングと分子系統解析、形態解析を行い、日本産本属の種多様化プロセス解明を試みた。その結果、本属では10種前後の同属種の共存が頻繁に見られることが明らかになり、このような多種共存が可能になっていることが、本属の種多様性増加の一因と考えられた。共存する種には複数の系統のものが含まれるが、同じ系統の複数種が共存している例も多かった。主に雄交尾器の形態に基づき取得した形態データについて、Bray–Curtis非類似度を用いた非計量多次元尺度法により、共存している種間での形態的距離が、ランダムに選んだ種間の場合と比べて有意に大きいかどうかを検定した結果、いくつかの地点で有意な差が検出されたことから、雄交尾器形態の分化が繁殖干渉を低減させ、多種共存を可能にした可能性が考えられた。