日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(一般) (桜)

[PG01-03] コオロギをモデルとした昆虫の白色スクレロチン合成酵素遺伝子のメラニン生成制御機能の解析

◯井上 慎太郎1、渡邉 崇人1,6、藤江 快2、島村 彩音2、石丸 善康3、宮脇 克行1、高橋 章4、二川 健5、三戸 太郎1 (1. 徳島大・BIRC、2. 徳島大・院創生科学、3. 徳島大・院社会産業理工、4. 徳島大・院医歯薬・予防環境栄養、5. 徳島大・院医歯薬・生体栄養、6. 株式会社グリラス)

ドーパミンから生合成されるメラニン色素は生物の多様な体色パターンの形成に関わっているが、その制御機構の理解は未だ不十分である。昆虫ドーパミンはメラニンの他に白色や黄色を呈するスクレロチン色素合成にも利用される。本合成系が優勢に働きメラニン生成を抑制する”erasing mode model”がカメムシOncopeltus fasciatusの研究から提唱されているが検証は進んでいない。本研究では、不完全変態昆虫のモデルであるフタホシコオロギGryllus bimaculatusを用いて、白色スクレロチン合成酵素遺伝子の機能喪失型および機能獲得型の表現型について体色に焦点を当てた詳細な解析を行った。
機能喪失型解析のためにRNAi実験を行った結果、脱皮後のコオロギは野生型に比べて黒い体色を示した。一方、エンハンサートラップにより主に脱皮期の上皮で本遺伝子の発現が誘導される過剰発現系統を樹立したところ、発生ステージを通じて体色の白色化を示した。以上の結果は、本遺伝子の発現がドーパミン競合を経てメラニン生成抑制に寄与することを示し、上述のモデル経路を実証するものである。白色スクレロチン合成酵素遺伝子の発現制御が昆虫の体色多様化と強く関連している可能性が示唆された。