[PG01-12] 都市の夜の明るさがニクバエの休眠に及ぼす影響
都市の夜の明るさは,生物の行動や生理に影響する.多くの昆虫は日長をもと生存に不適な季節の到来を予測して休眠に入るが,都市の夜の明るさが季節のよみとりに及ぼす影響についての知見は限られる.ニクバエは幼虫が日長に応答して蛹休眠に入る.卵胎生であり,子宮内で感受した日長にも応答する.先行研究では,幼虫期全体への人工照明の暴露が休眠を抑制したが,幼虫は負の光走性を持ち,子宮内の幼虫が人工照明の影響を受けやすいと考えられる.本研究では,野生のハエが経験する都市環境を再現するため,子宮内幼虫に着目し,人工照明がニクバエの休眠に及ぼす影響を検証した.産仔7日前から野外に設置した棚(夜間照度約0.2 lux)で飼育したメス成虫,同じ時期に夜間照度10 luxに暴露したメス成虫,さらに野外棚近傍の駐車場(夜間照度約30 lux)で昼間に採集した野生のメス成虫から幼虫を回収し,野外棚で飼育した.8月~11月中旬まで7日毎に回収した幼虫の休眠率を調べた結果,子宮内幼虫を夜間照度に暴露したハエの休眠率は,野外棚飼育に比べて低く,野生のメス成虫が産んだ子の休眠率は野外棚で飼育したハエと同等であった.幼虫が子宮内で経験した夜の明るさは休眠を阻害するが,野生のハエは人工照明を避けるのだろう.