[PG01-13] 奈良県に侵入したアルゼンチンアリの個体群タイプと分布・分散パターン
侵略的な外来アリ類は,人間の幸福や経済・社会,また生態系の安定性を脅かす.なかでもアルゼンチンアリは,世界で最も影響力のある非意図的外来アリとして悪名高い.外来アリの分布の中心は,輸送拠点となる港湾地帯である.港湾地帯は周囲の景観から隔離されているため,管理方針も比較的立てやすい.しかし,一部のコロニーは輸送トラック等に付随して,内陸都市部などに二次的に移動する.2021年,奈良県で本種が初確認された.内陸都市部へのアルゼンチンアリの侵入にかかる知見は,国内外を問わず限られている.そこで本研究では,奈良市に侵入したアルゼンチンアリ個体群を対象に,(1)分布の現状把握ならびに侵入後における分散過程の予測と,(2)敵対性試験にもとづく本個体群のタイプの推定を行った.分散過程の予測には,セルオートマトンモデルを用いてシミュレーションした.奈良個体群のタイプを明らかにすべく,調査地全域の複数地点から本種の個体を採集し,同一地域集団内で敵対性試験(five on five test)を実施した.その後,異なる遺伝集団(ハプロタイプ:LH1-LH4)間で同様の試験を行い,敵対性にもとづくアルゼンチンアリ奈良個体群を特徴づけた.本発表では,これらの結果について報告する.