[PG01-29] 社会性アブラムシが誘導する植物ゴールの蒸散作用と温度調節機能の実験的検証
社会性昆虫は外部環境の変化に関わらず、巣内の環境を維持するホメオスタシスの仕組みを進化させている。社会性種ハクウンボクハナフシアブラムシが誘導する植物ゴールは、彼らにとって重要な食料源であり、防護壁であり、生存に不可欠な巣である。本種のゴールは植物の生きた組織からなり、他の社会性昆虫の巣とは異なる独自の機能を備えている。これまでの研究で、ゴールが紫外線からアブラムシを守り、光合成を通じて酸素を供給することがわかっている。今回我々は、リアルタイムで蒸散量を測定できる実験装置を用いて、ゴールが蒸散により巣内温度を調節していることを明らかにした。野外では、ゴールの表面温度が外気温よりも2-5℃ほど低く、気化熱によって巣内温度を下げる可能性が示唆された。さらに、実験室での蒸散量測定からは、ゴールが蒸散作用を持ち、葉よりも蒸散量が多いことが明らかになった。また、ゴール下面の小孔を塞ぐことでゴール全体の蒸散量が増大することが確認された。これらの結果から、ゴールが温度調節やガス交換に関わることが示唆され、巣の環境応答機能の新たな理解が得られた。