[PG01-31] 単一種の宿主を共有する社会寄生者は宿主のコロニーも共有するのか
社会性昆虫の巣には巣内の資源を利用する多様な社会寄生昆虫が存在する。特にアリでは生態が類似すると考えられる複数の寄生種が1種の宿主を共有することも多い。しかし、このような状況下では、寄生者種間での競争が生じると考えられる。本研究ではトビイロシワアリTetramorium tsushimaeを宿主とする3種の寄生者、サトアリヅカコオロギMyrmecophilus tetramorii、クボタアリヅカコオロギM. kubotai、クロサアリシミNipponatelurina kurosai(以下サト、クボタ、シミ)の種間相互作用の解明を試みた。まず、野外の宿主コロニーでの3種の在不在を調べ、サトとクボタ、シミとクボタは同一コロニー内に生息することもあるが、サトとシミは共存しないことを明らかにした。また、アリーナ試験でシミがサトに対して尾端を叩きつけ、追い払うことを発見した。さらに、3種間で宿主からの攻撃頻度や経口給餌継続時間、宿主へのグルーミング継続時間などの宿主との相互作用を比較したところ、サトとシミの2種は行動が類似していることを見出した。これらの結果は、宿主との相互作用が類似する社会寄生種間では競争が生じ、同一コロニー内には共存しないが、宿主種を共有することを示唆する。