日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(一般) (桜)

[PG01-33] 産卵以前に決定されるシロアリのカースト分化運命

◯高田 守1、永井 秀弥1、稲垣 辰哉1,4、大久保 祐作2、田﨑 英祐1,3、松浦 健二1 (1. 京都大院・農、2. 統計数理研究所、3. 新潟大・理、4. 東工大・生命理工学院)

真社会性の生物は分業によって特徴付けられ、コロニー内で生まれた子は、相互に異なる役割を担うカーストへと分化する。その構成が状況依存的に調節されることにより、各コロニーは統制された振る舞いをする。彼らの社会を支えるコロニーレベルでのカースト決定機構を解明することは、真社会性の起源に迫る上で必須である。本研究では、ヤマトシロアリの野外コロニーを対象に、幼虫の分化運命と次世代の繁殖虫である羽アリの性比がどの発生段階で決まるのか調査し、その決定機構を探索した。野外コロニー内で育った幼虫と均質化した環境で育った幼虫の繁殖カーストへの分化率を比較した結果、親が産卵した時点で既に子の分化運命が決定されていることがわかった。さらに幼虫における繁殖カーストへの分化率は雌雄で異なり、それが羽アリ性比に反映されることでコロニーレベルでの性投資比を決定付けることも判明した。本発見は、ゲノム上の塩基配列によらない遺伝因子が、真社会性昆虫の分業システムを支えていることを示すものである。