[PG01-33] 産卵以前に決定されるシロアリのカースト分化運命
真社会性の生物は分業によって特徴付けられ、コロニー内で生まれた子は、相互に異なる役割を担うカーストへと分化する。その構成が状況依存的に調節されることにより、各コロニーは統制された振る舞いをする。彼らの社会を支えるコロニーレベルでのカースト決定機構を解明することは、真社会性の起源に迫る上で必須である。本研究では、ヤマトシロアリの野外コロニーを対象に、幼虫の分化運命と次世代の繁殖虫である羽アリの性比がどの発生段階で決まるのか調査し、その決定機構を探索した。野外コロニー内で育った幼虫と均質化した環境で育った幼虫の繁殖カーストへの分化率を比較した結果、親が産卵した時点で既に子の分化運命が決定されていることがわかった。さらに幼虫における繁殖カーストへの分化率は雌雄で異なり、それが羽アリ性比に反映されることでコロニーレベルでの性投資比を決定付けることも判明した。本発見は、ゲノム上の塩基配列によらない遺伝因子が、真社会性昆虫の分業システムを支えていることを示すものである。