日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(一般) (桜)

[PG01-35] 侵入害虫キオビエダシャクにおける光周性の適応不全

◯新谷 喜紀1 (1. 南九州大・環境園芸)

キオビエダシャクは、今世紀初頭に南方より九州南部に侵入し、幼虫がイヌマキ類を食害して大問題となっているシャクガ科の蛾である。本種は九州南部では1年に4~5世代を経過する多化性の生活史を示す。本種は長日型の光周反応を持ち、短日条件下では幼虫と蛹の発育が遅れる。この反応は冬の寒さが厳しくない自然分布域では、冬季における成虫の出現や繁殖を防ぐ役割を果たしているのかもしれない。しかし、九州南部では、孵化直後の幼虫の餌となる寄主植物の新芽がない冬に成虫が出現するという不時発育が観察されている。この事実は、本種の光周反応が、新しい生息地では機能不全を起こしている可能性を示唆している。室内実験により、本種の短日条件下での発育遅延は、少なくとも蛹については、発育齢点を変えずに有効積算温度(K)を増大させる応答の結果であることが示唆されている。本研究では、宮崎県都城市及び周辺地域で採集して得られた個体について、蛹期のKの蛹化時期による変化や、蛹化時期の違いが成虫の羽化時期や冬季の生存率に及ぼす影響について調べた。その結果、野外で蛹のKが季節的に変化することや、蛹化時期に関係なく高い割合の個体が冬期に死亡するものの蛹化時期によって生存率が異なることが明らかとなった。