[PG01-38] アシナガバチ5種における羽ばたきと翅音の周波数解析
昆虫の翅音は意思伝達や捕食回避に重要な意義を持つが、翅音の発生機構やその多様性は特にハチ類において十分に解明されていないため、アシナガバチ5種の羽ばたきと翅音の周波数解析を行なった。ホバリング時の飛行を高速度カメラで撮影し、1周期の羽ばたきにおける前翅前縁の軌跡を時間波形として記録した。その結果、翅は後方へ振るときよりも前方へ振るときに素早く動いていた。時間波形を周波数解析すると、羽ばたき周波数を基本周波数として複数の高調波にピークを認めたが、基本周波数を最大音圧として高次となるほどピークの振幅は減少した。次に、アシナガバチの翅音をマイクで記録したところ、羽ばたきとは異なり、1周期の羽ばたきの間に2回の振動を示す音波形を認めた。これを周波数解析すると、羽ばたきと同様に複数の高調波にピークを認めたが、2次の高調波において基本周波数と同等以上の音圧を認めた。この音は、ハチドリの理論科学的研究で予測された空力音「Gutin音」と想定された。ハチ類の翅音に関する上記の知見は、翅音の多様性だけでなく音を介した捕食者・被食者間の相互作用の解明や、翅音を用いたハチ検知装置等に将来的に貢献できると考えられた。