日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(一般) (桜)

[PG01-55] ネッタイシマカのイヌ糸状虫感染表現型に関する遺伝的個体差の解析

白水 貴大1,2、◯佐々木 瑞希1、Tiwananthagorn SARUDA3、福本 晋也1 (1. 帯広畜産大学・原虫研、2. 藤田医科大学・疾患モデル、3. チェンマイ大学・獣医)

イヌ糸状虫媒介能は一部の蚊種に限定され、また同一種内の蚊でも系統差と個体差がある。我々のこれまでの研究において、ネッタイシマカLiverpool系統の中で媒介能が高く感染期幼虫(L3)を多く産生する感受性系統、媒介能を持たずL3を産生しない抵抗性系統の同定に成功した。遺伝学的解析の結果、イヌ糸状虫抵抗性表現型は雌性随伴的に遺伝することを明らかにした。そこで表現型依存的な交配実験により、イヌ糸状虫媒介能に関する蚊の個体差発生メカニズムを解明可能なのではと推測した。そこで本発表ではフィールド由来ネッタイシマカを用いた蚊のイヌ糸状虫媒介能の個体差と表現型の遺伝学的固定を試みたので報告する。タイ王国チェンマイでネッタイシマカ(CM4、CM7)採取した。この2系統の犬糸状虫感染表現型解析の結果、CM4は感受性型、CM7は感受性・抵抗性の混在型であることが示された。CM7について、犬糸状虫感染表現型に基づき選別・繁殖を行った。その結果、CM7集団から感受性系統(CM7S)・抵抗性系統(CM7R)の分離に成功した。すなわちネッタイシマカにおいて、イヌ糸状虫感染低抗性表現型の雌性随伴性遺伝は保存されている現象であり、今後の更なる解析により本症を含むフィラリア症の制御に繋がることが期待される。