[PG01-57] 海浜性甲虫類から検出された便乗、寄生線虫
これまでに昆虫関連線虫の調査例が少ない海浜環境で、そこに生息する甲虫類から線虫検出を行った。調査は、主に、福井県高浜町の2か所の砂浜で行い、これ以外に、和歌山県白浜町、三重県紀北町の試料が利用可能であった。海藻など、漂着物の下を中心に甲虫類を手取り採集し、同定したのち、解剖して、寄生線虫の検出を試みた。解剖後の昆虫死体は2.0%水寒天、もしくは、人工海水寒天の上に保存し、そこで増殖する便乗種の検出を試みた。検出された線虫種に関してはマーカー領域の塩基配列を決定した。この結果、便乗種としては、ガムシ類から、2種の Acrostichus spp.、未同定ヒゲブトハネカクシから Litoditis marina を、寄生種ではアカウミベハネカクシから Entaphelenchus sp.、3種のハネカクシから cf. Proparasitylenchus sp. を検出した。このうち、分類学的に注目すべきは、Entaphelenchus sp. であり、本種は、系統解析の結果、同亜科に属する Peraphelenchus 属とは、明らかに離れており、同亜科の単系統性は否定される。また、Acrostichus spp. はいずれも日本海側、太平洋側両方の試料から検出され、広域分布種であると考えらえた。