[PS01-05] ネッタイオカメコオロギをモデルとした頭部新奇形質の発生メカニズムの探索
昆虫は新奇形質の獲得により形態を多様化してきた。特に、頭部は構造が高く保存されているにも関わらず、様々な系統で独立に新奇形質が獲得され、形態的多様化のホットスポットとなっている。本研究では、昆虫の頭部新奇形質の進化的起源を探索し、その形態多様化の遺伝的基盤の解明を目的としている。この目的のため、終齢幼虫までは雌雄ともに祖先形質を示す、成虫で雄特異的に新奇な頭頂部の突出と頭部前面部の扁平化を示すネッタイオカメコオロギをモデルとして、これらの新奇形質の発生メカニズムを調査した。突出および扁平な形態が形成される時期および部位を詳細に特定するために、X線マイクロCTを用いて、雌雄の終齢幼虫の頭部発生を比較した。その結果、終齢後期で表皮パターンに雌雄差が生じる部位としてfronsを特定した。これは、幼虫から成虫への移行制御及びfrons領域を規定する遺伝的メカニズムが協働して、オス頭部の突出および扁平化に関与している可能性を示唆する。この点を追及するために、ネッタイオカメコオロギにおけるRNAi法を確立し、雄特異的な頭部形態形成の時空間的制御に関与すると考えられる遺伝子群について機能解析を行った。これらの結果をもとに、昆虫の頭部新奇形質形成をとりまく時空間的制御について議論する。