[PS01-09] カメノコハムシ類特有の扁平縁形成の遺伝的メカニズム解明
草食性甲虫であるハムシ科のうちカメノコハムシ亜科に属する種は、前胸部及び鞘翅の外側に板状のクチクラ層「扁平縁」を形成する。この扁平縁は外敵に対する防御形態として機能すると考えられており、カメノコハムシ亜科を特徴づける新奇形質であるが、その発生遺伝メカニズムは未だに解明されていない。本研究ではヨツモンカメノコハムシ(Laccoptera nepalensis)を対象に、扁平縁構築メカニズムに昆虫の翅形成に関与する遺伝子群が流用されているという仮説を立てた。RNAi法を用いた遺伝子ノックダウン(KD)により、翅形成遺伝子の扁平縁への影響を調査した。実験の結果、翅形成マスター制御遺伝子VestigialのKDが、前胸部扁平縁の縮小を引き起こすことが明らかになった。またVestigialと合同で機能する転写因子ScallopedのKDも、前胸部扁平縁をやや縮小させた。これらの翅形成遺伝子のKDは中胸・後胸の翅だけでなく、古くは翅に由来すると考えられる翅の連続相同構造と目される、甲虫の前胸部の構造(hypomeronなど)にも影響を与えることが知られている。発表ではカメノコハムシ亜科の前胸部扁平縁が、hypomeronなどと類似した翅の連続相同構造に由来する可能性について議論したい。