日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS01-11] 北琉球・中琉球に分布するウエノツヤドロムシ Urumaelmis uenoi (コウチュウ目: ヒメドロムシ科)と近縁属 ツヤドロムシ属Zaitzevia の分子系統地理

◯吉田 匠1、林 成多2、竹中 將起3、東城 幸治3 (1. 信州大学大学院・総合理工学、2. ホシザキグリーン財団、3. 信州大・理・生物)

琉球列島は高い生物多様性や固有性を有する地域であり、生物地理研究において興味深い地域である。陸水環境に生息する種は系統地理研究の材料として扱われることが多いものの、琉球列島では陸水生物を用いた系統地理学的知見は少なく、琉球列島の陸水生物相の形成要因に関して不明な点が多い。そこで、本研究では琉球列島の北部から中部に分布する河川棲水生昆虫のウエノツヤドロムシと近縁属を対象に分子系統地理研究を実施した。その結果、ウエノツヤドロムシでは、琉球列島内に位置する生物地理学的境界である渡瀬線を遺伝的な境界とする主要な2系統(以降、北琉球系統、中琉球系統)が確認された。2系統の系統関係はmtDNAとnDNAで不一致が生じており、mtDNAではウエノツヤドロムシの北琉球系統が別属のツヤドロムシ属3種(北海道、本州、四国、九州に分布)との単系統性が支持され、nDNAではウエノツヤドロムシの北琉球系統と中琉球系統が単系統となり、種としての単系統性が支持された。本発表では、ウエノツヤドロムシの遺伝構造、mtDNAとnDNAの系統関係の不一致にも着目し、琉球列島の陸水生物相の形成要因について議論したい。