日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS01-13] コクヌストモドキにおける雌の産卵場所拡散活性と産仔数の関係

◯山河 丈留1、松村 健太郎2 (1. 香川大院・農、2. 岡山大院)

多くの動物において移動することは、移住や遺伝子流動を導くが、エネルギー消費や捕食危険の増加を伴うなどのデメリットもある。受精卵を産卵する時の雌においては、生息場所に留まって産卵することは自身の生存や産卵場所の確保においてはメリットがあるが、限りある資源を巡る親子間・きょうだい間の競争が生じるデメリットがあるだろう。そのため、産卵場所を拡散させるために雌が移動することで、子孫の生存率を増加させる可能性がある。さらに、産卵場所拡散は、予測不能な環境変動による子孫の全滅を回避する可能性を高めるだろう。しかしながら、これらの仮説を実証した研究例は数少ない。そこで本研究は、コクヌストモドキの交尾済みの雌を用いて、雌による産卵場所拡散が次世代個体数に及ぼす影響を検証した。本研究ではさらに、遺伝的に移動活性が高い系統と低い系統を用いることで、その遺伝的基盤についても検証した。その結果、産卵場所をより広範囲に拡散させた雌の方が有意に次世代個体数は多いことが明らかになり、産卵場所を拡散させる雌の方が適応的であることが示唆された。その一方で、移動活性が異なる系統間で産卵場所拡散の程度に有意差は見られなかったため、産卵場所拡散は雌の遺伝的な移動活性に依存しないことが示唆された。