[PS01-27] 植物は食害特異的なスペクトルの光シグナルを発するのか
天敵昆虫は特定の光波長を選好することは知られているが,その生態学的意義は理解できていない.天敵昆虫は,植物が発する食害特異的な匂いシグナルを餌となる植食者発見のための手がかりとして利用している.もし,植物が食害特異的な光シグナルも発しているならば,天敵昆虫はその光シグナルを利用して植食者を探索している可能性があると考えた.本研究では,植物が食害特異的な光シグナルを発するかどうかを評価するために,ハイパースペクトルカメラを用いて健全植物と食害植物を撮影し,それらの葉から発せられる光スペクトルを紫外域(350 nm)から赤外域(1050 nm)まで比較した.食害開始から1日後のインゲンマメ葉片は,健全な葉片と比べて可視域の青と緑の領域の一部の波長で光強度が有意に高かった.食害日数が増加すると,食害葉片は,健全葉片と比べて,ほぼすべての領域で光強度が高く,光スペクトルが有意に異なった.さらに本発表では,トウモロコシの健全葉とアワヨトウ食害葉の光スペクトルを比較した結果と,昨年度の本大会で発表したカリヤサムライコマユバチ(アワヨトウの天敵)の光波長の選好性結果も合わせて,植物由来の光シグナルを利用した天敵昆虫の餌探索について議論する.