[PS01-29] 傷ついた仲間由来の抽出物に晒されたハダニは防御網から分散する
一部の被食動物は、傷ついた仲間の匂いに反応して対捕食者防御を誘導する。Tetranychus 属のハダニは、世界的に主要な農業害虫と見なされており、普段はジェネラリスト捕食者が侵入できない立体的な防御網の中で暮らしている。ハダニは防御網を出ると外界の多くの捕食者に簡単に捕食されるため、彼らを網から分散させることができればハダニの生物学的防除に大きく貢献できるだろう。ナミハダニ(Tetranychus urticae 以下TU)とカンザワハダニ(Tetranychus kanzai 以下TK)の分散ステージである雌成虫は、スペシャリスト捕食者のカブリダニが網に侵入すると、網上に退避したり網外へと分散したりする。カブリダニは、ハダニの成虫よりも卵を好んで食べるため、傷ついたハダニの卵の臭いは、ハダニの早期警戒に役立つ筈だ。この仮説を検証するため、網内の卵を潰すとTU および TK の雌成虫が網から分散するかを調査した結果、両種の雌成虫は同種または他種の卵の破壊に反応して網から分散した。さらに、TU 雌成虫は、TU 卵のメタノール抽出物を塗布した濾紙片を挿入すると網から分散しやすくなった。本報告は、同種の体抽出物を用いてハダニを防御網から分散させた初の事例である。