[PS01-45] フキバッタ類における交尾姿勢と生殖器形態の左右性の検討
多くのバッタ類では、雄が雌にマウントし雌の体軸の左右いずれかから腹部をアプローチさせて交尾器を接合させるが、左右両方向での交尾が可能であるとされている。しかし、これまでに、イナゴ類は右方向でのみ交尾する“右利き”であることが明らかになっている。本研究では、イナゴ類で生じている“右利き”交尾の起源を検討するために、姉妹群にあたるフキバッタ類の4種(ヤマトフキバッタ、ミカドフキバッタ、ハネナガフキバッタ、アオフキバッタ)を対象とした野外観察・交尾実験・形態分析を行い、交尾姿勢および生殖器形態に左右性が生じているかを調査した。野外観察と交尾実験についてはヤマトフキバッタ以外では十分なデータを得られなかったものの、先行研究とあわせると、交尾姿勢はハネナガフキバッタで有意に右向き、ミカドフキバッタで右向きに偏る傾向がある一方、ヤマトフキバッタでは左右性は存在せず、アオフキバッタについても左右性は存在しない可能性が高いと考えられた。生殖器形態については、交尾嚢の形態に3種で左右二型性、1種で多型性が確認され、各型の比率は種ごとに異なっていた。交尾姿勢と生殖器形態にみられる左右性の間に因果関係があるのかを考察する。