[PS01-47] ヒユ科食カメノコハムシ類3種間の不完全な隔離障壁
植食性昆虫の複数の近縁種が同所的に生息している場合、様々な隔離障壁の作用によって共存状態が実現されていると考えられる。いずれもCassida属であるカメノコハムシ(以下、ナミカメ)、ヒメカメノコハムシ(ヒメカメ)、イノコヅチカメノコハムシ(イノカメ)は同所的に出現することがある。ナミカメとヒメカメは主にシロザ類を、イノカメはイノコヅチ類を寄主としている。異なる寄主を利用するハムシ種間では生息場所隔離の成立が期待されるとともに、共通の寄主を利用するナミカメとヒメカメの間には行動的隔離がよく発達していることが予想される。しかし、野外においてイノコヅチ上でナミカメが観察される事実は、生息場所隔離が不完全であることを示唆する。また、野外及び実験条件下において、これらのハムシ類の組み合わせの全てで低頻度ながら種間交尾が生じることは、行動的隔離が不完全であることを示唆する。本発表では、実験条件下における幼虫の成育状況、成虫の食性および寄主忠実度、さらに異種に対する交尾行動の頻度を報告し、自然条件下における各隔離障壁の様相を考察する。