[PS01-65] メス化ボルバキアがオス化を引き起こす? ―石垣島のミナミキチョウにおけるオス化の性状解析―
ボルバキアは昆虫の細胞内共生細菌であり、宿主の生殖を操作する。ミナミキチョウEurema hecabe(以下、ミナミ)には、wCIとwFemの2系統のボルバキアが感染している。wCIのみに感染している個体の子の性比は1:1となるが、wCIとwFemに重複感染している個体では子がすべてメスとなる。また、キタキチョウでは重複感染個体の性染色体はZ0型であり、ボルバキアが減数分裂を操作している(マイオティックドライブ)と考えられている。石垣島での野外性比の調査の結果、2022年4月ではオスの割合が5.6%(n=72)、2023年4月ではオスの割合が17.7%(n=283)であり、2023年はオスの頻度の増加を確認した。そこで、2023年に石垣島で採集した重複感染のミナミの飼育実験を行った結果、F1の性比が、①メスのみ、②オスのみ、③メスとオスの3つのタイプに分かれることを確認した。PCR法によってF1のボルバキアの感染チェックを行ったところ、メスは全ての個体でwFemに感染していたが、オスはwFemに感染していないことが明らかとなった。本公演では、F1のZ染色体の定量PCRの結果と併せて、石垣島のミナミにおけるオス化現象とマイオティックドライブの関係性ついて考察する。