[PS02-04] クロマルハナバチBombus ignitusのワーカーにおける個体間認識が産卵開始に及ぼす影響
マルハナバチのコロニーでは、女王不在時もしくは衰弱時に一部のワーカーが卵巣を発達させ、産卵を開始する。セイヨウオオマルハナバチでは、優位性を確保するために他個体を攻撃して卵巣を発達させ産卵に至る(Amsalem et al., 2014)。しかし、クロマルハナバチでは個体間の攻撃行動は極めて稀であり、ワーカーは複数個体が同所的に存在しなければ産卵を開始しないことが分かってきた。そこで、本研究ではクロマルハナバチのワーカーが周囲の個体を認識し、産卵を開始するメカニズムを明らかにすることを目的とした。24時間以内に羽化した新生ワーカー3個体を飼育箱に入れて14日間飼育した。その際、飼育箱内で個体間の接触条件を変えた処理区を3つ用意した。また、巣箱内での産卵の有無に併せて歩行の軌跡や歩行距離、個体間の接触頻度をビデオで記録した。その結果、個体同士が自由に接触できる対照区では、網や木の壁で個体を隔てた処理区に比べ産卵が起こりやすかった。また、産卵が起こった巣箱では飼育3日目から個体同士が1か所に集合を始め、産卵が行なわれた。以上より、クロマルハナバチのワーカーは直接接触により他個体を認識し、複数個体で最適な産卵場所を決定している可能性がある。