日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム1)

2024年3月30日(土) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS02-05] 代役の働きアリは不足するタスクを補償するのか

◯田中 康就1、辻 和希1,2、下地 博之1,2 (1. 鹿大・連合農学研究科、2. 琉大・農学部)

アリなどの真社会性昆虫は個体間の高度な分業体制を特徴とし、中でもワーカー間の分業はコロニーの維持に重要な役割を担う。これは通常、若齢ワーカーが内役タスクである巣内での子の世話を行い、老齢ワーカーが巣外での採餌など外役タスクを担う日齢依存性を示す。一方で、例えば外役が大量死した場合、若齢ワーカーは内役タスクから外役タスクへ移行する。このようなタスク移行は多くの真社会性ハチ目の種で観察されており、分業維持の鍵だと考えられている。しかし、タスク移行後のワーカーがどの程度そのタスクをこなせるのかは自明ではない。本研究ではトゲオオハリアリを用いて、タスク移行ワーカーが不足タスクをどの程度補償するのかを調べた。初めに、タスク移行を誘導するために、外役 (外役区) もしくは内役 (内役区) に偏ったサブコロニーを作成した。次に、両処理区を14日間飼育し、コロニーの生産性の指標として卵、幼虫の数、重量を測定した。その結果、卵の数のみが統計学的に有意に外役区で減少した。更に、行動観察を行った結果、外役から内役へ移行した個体は主に幼虫の世話を行い、卵の世話にはほとんど従事しないことがわかった。これらの結果から、外役は内役タスクを完全に補償するのではなく、一部の労働を選択的に行う可能性が示唆される。