[PS02-08] DIPA-CRISPR法によるチャバネアオカメムシの高効率なゲノム編集
チャバネアオカメムシは作物生産に被害をもたらす害虫であるだけでなく、実験動物としての有用性も持つ。本研究では、本種におけるDIPA-CRISPRによるゲノム編集法の確立を試みた。複眼色素合成に関与する遺伝子cinnabarを標的としたCRISPR/Cas9 RNPを羽化後の雌成虫に注射し、その後産下される次世代(G0)集団をスクリーニングし、ゲノム編集による変異体の有無とその割合を調べた。条件検討の結果、羽化後5日目以降の雌成虫に注射することで変異体が得られること、特に羽化後14日目以降の性成熟を終えた雌成虫に注射することでゲノム編集効率が高くなることが明らかとなった。また、次世代を回収するタイミング(卵塊)を適切に選択することで、ゲノム編集効率は約42%にまで達することが分かった。G0変異体の交配で得られたG1集団の遺伝子型スクリーニングと表現型観察から、G0個体に導入された変異はG1世代へと高確率で受け継がれることも確認された。本研究により、DIPA-CRISPR法がチャバネアオカメムシにおいて特に有効であること、そして本法が実用的なゲノム編集法として広くカメムシ目昆虫全般に適用できる可能性が示された。