[PS02-09] 異なる青色光波長による昆虫細胞致死メカニズムの違い
我々は青色光照射で引き起こされる昆虫致死メカニズムの解明へ向けて、Schneider 2(S2)細胞を用いて解析している。これまで、TUNEL染色とフローサイトメトリーを用いた解析により、短波長側青色光(405~435 nm)ではDNA断片化によるS2細胞の致死が認められる一方で、長波長側青色光(450~470 nm)ではDNA断片化によらず、G2/M期での細胞周期の停止が引き起こされることを明らかにしてきた。DNA断片化による細胞死の原因としてアポトーシスが考えられたため、420 nmおよび470 nm照射区でqPCR法により主要なアポトーシス調節遺伝子の転写量変化を解析した。DNA損傷の起きた420 nm照射区でのみ転写量が増加すると予想していたが、470 nm照射区においてもアポトーシス促進に関連する遺伝子の転写量が大きく増加した。このため、波長領域に関係なく青色光照射によってS2細胞のアポトーシス経路の反応は促進されるが、長波長側青色光では何らかのメカニズムによりアポトーシスが阻害されていることが示唆された。また、転写量が増加したアポトーシス促進因子のうちHidはがん関連因子Ras関連経路によって制御されるため、長波長側青色光の細胞増殖抑制にRas経路が関係する可能性が考えられた。