[PS02-103] 昆虫病原性線虫Heterorhabditis indicaの共生細菌種の違いが宿主線虫へ与る影響の調査
昆虫病原性線虫の一種Heterorhabditis indicaは国内の温暖な沿岸地域に分布し、Photorhabdus luminescens subsp. akhurstiとP. asymbioticaを共生細菌として保有する。演者らの野外調査において、P. asymbioticaを保有するH. indicaが海に最も近傍な植生である海浜草原中からのみ繰り返し分離されたことから、共生細菌種の違いは線虫分布環境に影響すると仮説を立てた。仮説を検証するため、異なる共生細菌種を持つ線虫を3系統ずつ準備し、ハチノスツヅリガに対する病原性と昆虫体内における線虫増殖率を異なる温度条件毎(25℃・30℃・33℃)に調査した。病原性試験の結果、各線虫系統間の致死時間において温度の違いによる差は確認されたが、異なる2種の細菌間での統計的に有意な差は検出されなかった。一方、ハチノスツヅリガ内の増殖率に関して、25℃と30℃下ではP. asymbioticaを持つ線虫系統の増殖率が30%程有意に低下する結果が得られた。33℃下では保有する細菌種によらず、試験した多くの線虫系統が増殖できなかった。このことから、H. indicaに共生する細菌種の違いは、線虫の増殖率に影響することが示唆された。