[PS02-105] ナミハダニの糸には唾液タンパク質も含まれている
2011年にナミハダニの全ゲノム塩基配列が解読され,糸タンパク質のFibroinをコードする17遺伝子が予測された.2021年には,3種のハダニを用いたマルチオミクス解析により,ナミハダニから新たに2つのFibroin遺伝子(TuFib1とTuFib2)が同定された.他方,本種ゲノムにはTuFib1と72.1%の類似性をもつ遺伝子(TusFib1)が存在し, 2016年におけるナミハダニの唾液プロテオーム解析よりこれら3つの遺伝子が検出されている.そこで本研究では,これら3遺伝子の機能を検証した.TuFib1とTuFib2を標的とするdsRNA(dsFib1とdsFib2)を合成し,RNAiを実施した.この時,dsFib1はTuFib1とTusFib1双方を標的とする.dsFib1投与区では,緩んだ平行の2本の糸や,途中で2本に裂けその間に架橋している糸が見られ,生存率と産卵数も低下した.また,糸プロテオーム解析より,Fibroinと予測されていた17タンパク質のうちの8タンパク質に加えて,TuFib1,TuFib2およびTusFib1も検出された.これより唾液として分泌されたTuFib1とTusFib1タンパク質は,糸の粘着性を担う構成成分としても機能している可能性がある.