[PS02-28] モンクロシャチホコの発生生態
モンクロシャチホコはサクラ等のバラ科植物を加害する害虫であり,大発生時には樹を丸坊主にしてしまうこともある.国内では本種の成虫は7月~8月,幼虫は7月~9月に発生し,幼虫は2か月にわたり様々な齢が混在する.しかし,本種の発生生態を詳細に研究した例は少なく,この発生期間が年1化で構成されるのか,2化で構成されるのかはよくわかっていない.中国では本種の生活環に関する研究例があり,チワン族自治区では1化または2化,福建省では3化であるとされる.そこで本研究では,国内での本種の発生生態を明らかにすることを目的とし,①本種は年1化で7月~8月にかけて成虫の発生がだらだらと続く,②本種は年1化で成虫は7月に羽化した後1か月ほど生存して産卵を続ける,③7月に羽化した成虫の子孫が2化目として8月中・下旬に羽化する,との3つの仮説をたて,野外条件下での幼虫発育,成虫の発生消長,成虫寿命を調査した.その結果,野外条件で飼育した幼虫はほとんどが休眠蛹になったが,一部は9月下旬に2化目が羽化した.野外における成虫の発生は,7月中旬から始まり,7月下旬にピークを迎え,8月下旬に終息した.9月に2化目の成虫を確認することはできなかった.成虫の寿命は約6日であった.以上のことから,仮説①が支持された.