[PS02-29] ツマジロクサヨトウの土着卵寄生蜂Telenomus remusの生活史特性
ツマジロクサヨトウSpodoptera frugiperdaはアメリカ大陸原産で、種々の農作物を食害する広食性のチョウ目の害虫である。本種(以下、ツマジロ)は2016年にアフリカ大陸に渡った後、世界各地に分布を拡げ、日本には2019年に侵入した。日本本土では、主として飼料用トウモロコシにおける食害が問題となっている。日本におけるツマジロの天敵として、幼虫寄生蜂類や土壌徘徊性昆虫が報告されている。しかし、発育の初期段階で密度を抑制する効果が高いとされる卵寄生蜂に関する報告はない。そこで、2023年の9月17日~26日に宮崎県三股町の飼料用トウモロコシ畑からツマジロ及びハスモンヨトウS. lituraの卵塊を採集し、室内に置いて寄生蜂の脱出を観察した。その結果、合計266卵塊のうち、21.1%に相当する56卵塊から、2種の蜂の脱出が観察された。そのうちの1種の外部形態については、すでにアメリカ大陸や東南アジアで、Spodoptera 属の卵寄生蜂として記載されているものの日本では初記録となるTelenomus remus (ハラビロクロバチ科)と酷似していた。本研究では、現状知られているT. remusの分布の北限となる宮崎県の個体群について、休眠性を中心とした生活史について調べた。