[PS02-33] マルハナバチによる開花促進現象を司る鍵物質の在り処
セイヨウオオマルハナバチは、花粉不足に陥った際に口器を用いて未開花植物の葉に穴を開ける。その結果として、傷害を受けた植物の開花が促進されることが報告されている(Pashalidou et al. 2020, Science 368, 881–884)。前回大会では、国内在来種であるクロマルハナバチの各体節の水抽出物を水溶液としてシロイヌナズナの葉にシリンジインフィルトレーション法で投与し、開花に要する日数への影響を調べた。水を投与したコントロールに対して胸部抽出物には有意な開花促進活性が認められ、開花促進現象がマルハナバチの胸部に由来する分泌物に起因すると示唆された。今回、活性物質の在り処を絞り込むために胸部を解剖・観察したところ、食道と飛翔筋の他に、腺細胞が認められ、胸部唾液腺の存在が明らかとなった。胸部の三器官を摘出し、それらの水抽出物を用いて活性試験を行うと、胸部唾液腺のみが活性を示したことから、開花促進物質は胸部唾液腺に由来すると考えられた。また、胸部唾液腺抽出物を分画分子量10 kDaの限外ろ過膜に通したところ、活性はろ液ではなく、濃縮液に認められた。