[PS02-37] オリーブアナアキゾウムシのoleuropein代謝戦略
オリーブアナアキゾウムシ(以下、本種)はモクセイ科をホストとする在来種でありながら、国内のオリーブ栽培における重要害虫である。オリーブを含む多くのモクセイ科植物は、化学防御物質としてセコイリドイド配糖体であるoleuropein(以下、OLP)関連化合物を有する。OLPはβ-グルコシダーゼにより加水分解されると、アグリコンが遊離して強力なタンパク質変性作用を示すが、本種はOLPを摂食刺激物質として利用しており、これを何らかの方法で無毒化していると考えられる。一部のモクセイ科専門食の鱗翅目・膜翅目幼虫は腸管内の遊離グリシン濃度を上げることでOLPアグリコンと拮抗阻害するが、本種では腸管内での高濃度のグリシン誘導は認められなかった。本種はこれまでに報告のない戦略でOLP関連化合物を代謝している可能性がある。一方で、オリーブの生葉、または葉由来の酵素を熱失活させた加熱葉を本種に与え、BApNAを用いて腸管のトリプシン様プロテアーゼ活性を評価した結果、生葉給餌区では加熱葉給餌区に比べて活性が低下していた。このことから、本種の持つ消化酵素は少なからず、OLP関連化合物をはじめとしたオリーブの有する化学防御物質の影響を受けていると考えられる。