日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム1)

2024年3月30日(土) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS02-55] なぜCry毒素を構成するタンパク質の種類は多いのか?
~翻訳領域とその周辺配列を比較した分子系統解析~

◯田村 琴音1、畠山 吉則1 (1. 日大・生物資源)

 Bacillus thuringiensisの有するCry毒素は殺虫性を示すため、微生物防除資材として利用されている。近年では殺虫性以外の機能を有していることも判明している。Cry毒素は1つの菌体に複数含まれ、72のサブクラスに分類される。また、1つのサブクラス内で生成されるタンパク質が多岐にわたるため、相同性の割合によって細分化されている。このような特徴は一般的な種内変化ではなく、独自の種内変化によるものと推測される。
 そこで本研究では、Cry毒素の関係性を検証するために系統樹を作成した。作成した系統樹は翻訳領域上流の非翻訳領域(上流配列)・翻訳領域(遺伝子配列)・翻訳領域下流の非翻訳領域(下流配列)・アミノ酸配列に加えて上流配列・下流配列・遺伝子配列を1本につなげた全体配列の計5種である。
 解析の結果、遺伝子・アミノ酸・全体配列では単一のCry毒素で1本の分枝を構成した。しかし稀に、単一のCry毒素の分枝内に異なる活性を持つCry毒素の混入が見られた。一方、上流・下流配列でも遺伝子・アミノ酸・全体配列の系統樹と同様に単一のCry毒素が1本の分枝を構成した。しかし、遺伝子・アミノ酸・全体配列の系統樹よりも異なる活性を持つCry毒素の混在が多く特に下流配列では顕著だった。