[PS02-83] ヤシャゲンゴロウにおける環境DNAを用いた生息密度推定
ヤシャゲンゴロウAcilius kishiiは、世界で福井県の夜叉ヶ池にのみ生息し、環境省の希少野生動植物種にも指定されている。本種の保全にあたっては、生息環境への配慮が重要であり、モニタリング調査の際に、個体群や周辺環境への人為的な影響を最小限に抑えることが求められている。本研究では、環境DNA(eDNA)を用いて現地から採水することによって本種の生息密度の推定が可能かどうかを検討した。2022、2023年に夜叉ヶ池の岸辺3地点で採水を行った。比較のために本種幼虫や成虫をさまざまな条件で入れた飼育水槽からも採水した。ミトコンドリアDNAのCOI領域の配列を元に本研究で開発した2種類のプライマーを用いてqPCRを行い、濃度を比較した。その結果、2種類のプライマーのいずれにおいても、現地と飼育水の両方でeDNAを検出することができた。現地のeDNA濃度は飼育水の場合と比較して低かった。飼育水では本種成虫・幼虫ともにeDNAが検出され、幼虫の方が高濃度となる傾向が見られた。今回は個体数と濃度の間に相関は見られなかったが、飼育水の条件を増やしてデータを蓄積することで現地の生息密度の推定に役立てることができると考えられた。