[PS02-88] 殺菌剤ベノミルがコマユバチ科内部寄生蜂3種の寄生に与える影響
ベノミルは本国の農業現場で広く利用されている植物用殺菌剤である。先行研究にて、モンシロチョウ幼虫がベノミル含有餌を経口摂取した場合、幼虫の成長や羽化は影響を受けない一方で、アオムシコマユバチによって寄生された幼虫がそれを摂取した場合、寄主体内の寄生蜂に対して致死作用を示すことが報告された(新川2020a, b)。これは圃場での殺菌剤の利用によって寄生蜂が大量に死亡している可能性を示唆するが、アオムシコマユバチ以外での検証例はない。本研究ではカリヤコマユバチとギンケハラボソコマユバチ(幼虫寄生)、ハマキコウラコマユバチ(卵-幼虫寄生)のコマユバチ科3種を対象に同殺菌剤の影響を評価し、寄生蜂に対するベノミルの影響の一般性を検証した。結果、ベノミルは鱗翅目幼虫に対する毒性は示さない一方で、寄生後の寄主がベノミルを経口摂取した場合にカリヤコマユバチ、ギンケハラボソコマユバチの両方で寄生が100%失敗することが示された。しかし、ハマキコウラコマユバチ(寄主:チャノコカクモンハマキ)の寄生は、ベノミル投与による影響を受けないことが確認された。以上より、鱗翅目幼虫へのベノミル経口投与による寄生蜂の寄生への影響はその寄生様式によって異なり、特に幼虫寄生蜂に対して強い影響を持つことが示唆された。