[PS02-90] 秋に日永を感じる:夜間照明によるアメリカシロヒトリ幼虫集団の休眠阻害
街灯などの人工照明は,近くに住む昆虫に季節を間違えさせているだろうか.短日条件で休眠に入る昆虫種では,夜間の人工照明により休眠時期を誤認する可能性がある.しかし,そのことを操作のない自然条件下で実証した事例はない.街路樹に生息するアメリカシロヒトリの第二世代において,街の夜間照明と休眠阻害の関係を調査した.石川県金沢市と白山市での光環境調査では,幼虫集団付近に存在する光源はLEDランプが最も多く,36.7%を占めた.幼虫集団が暴露していた夜間照度は,0.09 lux〜388.5 luxの範囲で,平均17.8 luxであった.白色LEDを用いた室内実験では,12L12Dの短日条件で暗期に5 lux,もしくは10 luxの追加照明を行った場合には,16L8Dの長日条件と同程度の高い非休眠率が得られた.一方,1 luxの追加照明では短日条件と似た低い非休眠率を示した.野外集団を採集して,その休眠程度を調べたところ,1 lux未満の低照度に曝されていた集団の非休眠率は平均5.6%であった.一方,1 lux以上の集団では平均34.1%という高い非休眠率が認められた.このことは,人工照明に近い場所に巣を造ったアメリカシロヒトリ幼虫集団が,日長を誤認して休眠阻害を起こしていることを強く示唆している.