[PS02-98] チョウ目幼虫が摂取した農業用殺菌剤ベノミルは一部の寄生蜂の寄生を失敗させる:では寄生蠅では?
化学農薬は害虫や病原、雑草等の防除のために使用されるが、非標的種に対しても影響を与える可能性がある。先行研究によって、捕食寄生性の寄生蜂アオムシコマユバチ(Cotesia glomerata)が寄生しているモンシロチョウ(Pieris rapae)の幼虫にベンゾイミダゾール系殺菌剤ベノミルを経口投与することで寄生が失敗する、という現象が報告されている。本研究では、捕食寄生性昆虫として寄生蜂に次ぐ種数を誇る寄生蠅について同様の現象の有無を確認するため、ブランコヤドリバエ(Exorista japonica)とカイコノクロウジバエ(Pales pavida)の二種類のヤドリバエをアワヨトウ(Mythimna separata)終齢幼虫に寄生させ、寄主にベノミル水和剤を経口投与して寄生成功率を調査した。その結果、前者ではベノミルによる有意な影響を確認できなかった一方で、後者ではベノミルによって寄生成功率が有意に低下し、ベノミルの存在下で寄生蠅による寄生が失敗する事例があることが示された。2種のヤドリバエで異なる結果が得られた理由は不明瞭なものの、両者の寄生様式の差異に由来する可能性が考えられる。