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[W05-03] サハラ以南アフリカにおけるツマジロクサヨトウの定着状況とトウモロコシ生産への影響
元来は南北アメリカ大陸を生息地とするツマジロクサヨトウSpodoptera frugiperda(チョウ目ヤガ科)について、2016年に原生息地以外ではじめてアフリカでの発生が確認された。サハラ以南アフリカでは、主食作物であるトウモロコシを加害する本種の侵入を脆弱な食料安全保障に対する脅威ととらえ、化学合成殺虫剤の散布による防除キャンペーンが推進された。しかし、同地域でもともと被害のあった在来種との競合や外来種の侵入によるトウモロコシ生産への影響についてはくわしい報告がない。そこで、2022年から2023年にかけてサハラ以南アフリカの典型的なトウモロコシ生産国であるガーナとマラウイで、ツマジロクサヨトウの定着状況とトウモロコシ生産への影響について調査した。予備調査の結果、ほとんどのトウモロコシ畑のチョウ目害虫のなかでツマジロクサヨトウが優占しており、同属近縁種をふくむ在来種がほぼ完全に外来種におきかわっていることが示唆された。いっぽう農民からの聞きとりによれば、過去数年間でトウモロコシの収量に大きな変化はみられなかった。侵略的外来種がなぜサハラ以南アフリカの作物生産に比較的ひかえめな影響しかあたえないのか、その根本的な理由を十分に検討する必要があるだろう。