日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W06] NBRPカイコにおける新規リソースの利活用-単為発生系統と倍数体系統

2024年3月29日(金) 18:30 〜 20:00 F会場 (小会議室2)

世話人:藤井告

18:30 〜 18:55

[W06-01] 新規カイコバイオリソースの収集・保存・提供ー単為発生系統

◯藤井 告1、藤本 章晃1 (1. 九州大学大学院農学研究院)

2002年度より始まったナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)は、生命科学研究に不可欠なバイオリソースの集約的管理を目的として運営されている。九州大学は、カイコバイオリソースの中核機関として系統の収集・保存・提供を行っている。また、リソース収集の一環として、外部の研究機関からの系統の寄託に応じている。労力の問題により生体保存できない系統については、卵巣や精子を利用した凍結保存を無償で行っていると同時に、凍結保存したリソースを有償にて復元・提供している。
 2023年度に、農研機構の廣川昌彦博士より、9系統の単為発生系統を含む47系統のカイコ系統が寄託された。それらの系統は、2024年度より九州大学から分譲可能である。カイコでは、雌蛾の卵巣から取り出した未受精卵を46度の温湯で18分間処理することで、非還元型の単為発生により次世代を得ることができる。雌ヘテロ型の性染色体構成を有するカイコでは、非還元型の単為発生で生じた2倍体のカイコは母蛾のクローンとなる。廣川博士より寄託された単為発生系統は、30年以上に渡って単為発生により継代されてきた。本発表では、それらの単為発生系統の詳細を紹介するとともに、遺伝学分野、育種学分野における研究材料としての可能性について議論したい。