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[W06-03] 低温処理により誘起したカイコ4倍体と後代3倍体の生殖と性染色体について
カイコ倍数体はコルヒチン処理のみならず温度処理によって誘起できる。産下数時間の卵を-10 ℃に約24時間処理すると、一部で4倍体とモザイクが誘発される。漿液膜細胞と核が大型の卵を4倍体候補として選抜する。倍数性の真偽は、雌では卵の大型化、雄での不妊性、染色体カウントやゲノムサイズ特定のみならず、次世代3倍体の卵色や幼虫体色分離比によっても検定できる。私は川村直子博士の指導の下、Zの劣性遺伝子座表現型分離比での性染色体構成の推定研究を行い、初めて論文を投稿した。無事アクセプトされたが、後年FISH法を樹立でき、確認実験を行ったところ、表現型分離による推定は必ずしも正しくなく、Z染色体2本の3倍体雄と3本の3倍体雄が混在することが明らかになった。4倍体雄の妊性を回復させ、4倍体系統を樹立しようとした。絶食が妊性回復に寄与したが、そのメカニズムも4倍体系統も樹立できなかった。ただ、不妊性を逆手にとって、受精しない無核精子の機能の一端を明らかにできた。現在では、日本とロシアの研究者がそれぞれカイコ4倍体系統樹立に成功している。本講演では、これまでに明らかとなった低温処理誘起の倍数体の特徴と生殖に関する研究結果を紹介したい。