日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W06] NBRPカイコにおける新規リソースの利活用-単為発生系統と倍数体系統

2024年3月29日(金) 18:30 〜 20:00 F会場 (小会議室2)

世話人:藤井告

19:40 〜 20:00

[W06-04] 4倍体単為発生と受精補助剤としての3倍体精子の活用

◯竹村 洋子1、持田 裕司1 (1. 蚕糸科学技術研究所)

私たちは、カイコの人工授精技術を確立し、凍結精子の長期保存が可能であることも明らかにした。凍結精子の受精率は、実用品種では高く、地域品種や突然変異品種では低いものが認められた。精子凍結には貯精嚢由来の精液を用いるため、精子束から乖離した無核精子の耐凍性は有核精子束に大きく劣ると推測される。それ故、凍結融解精子の人工授精時に無核精子の供給源として3倍体精液の添加を発案した。その結果、受精率の向上、希釈効果、産下卵数の増加など様々な受精補助効果が認められた。3倍体雄カイコは通常、4倍体雌に2倍体雄を交配して得ていたが、理論上雄の割合は16%と少ない事が欠点である。1977年から単為発生で継代する4倍体雌系統から作製した3倍体精液では、凍結精子の人工授精率を約2倍向上させた。この3倍体は、約75%の孵化率で、雄が約25~45%と様々であった。1982年頃の3倍体雄の割合は2.4%であったとの報告が残っており、何らかの変異が考えられた。そこで、4倍体の染色体構成をBAC-FISHにより調査した。その結果、W断片化や常染色体に転座した可能性が示唆された。温湯処理誘起4倍体は、純粋なクローン化ではなく、染色体構成に変異を生じつつも4倍性の個体維持が継続している単為発生系統と推測される