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[W08-04] ゲノム編集を利用した個体・系統識別マーカーの作出
CRISPR/Cas9システムはピンポイントで狙った遺伝子に変異を導入できる、簡便で汎用性の高いゲノム編集ツールとして、さまざまな生物で有効性が実証されている。昆虫も例に漏れず、実験モデル種だけでなく、ごく普通の種でも卵や初期胚、あるいはメス親の体腔内にゲノム編集ツールを注入できればゲノム編集が可能である。昆虫におけるゲノム編集は遺伝子機能の解析が主な目的で、産業利用を目指している事例は数少ない。現在産業利用されている昆虫は、ポリネーターとしてのセイヨウミツバチや生物農薬としての天敵昆虫などであるが、これらの有用種にも、改良すべきいくつかの問題がある。例えばセイヨウミツバチでは、よい形質をもつ個体が得られても養蜂の過程で徐々に失われてしまい、系統化(育種)できた例はほとんどない。そこで私たちのグループでは、よい形質をもつ個体の選抜やトレーサビリティーの確保のために、色彩に関わる遺伝子を標的にしたゲノム編集を利用して個体識別マーカーの作出を試みている。また、重要害虫の不妊虫放飼においても、放飼不妊虫と野性虫を区別しながらモニタリングする必要があり、個体・系統識別技術は有用である。本講演では、昆虫の色彩をどう改変し、どのように利用するかについて、研究成果を紹介しながら議論したい。