日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W09] モンシロチョウ属の種間関係と食草との関係に関する研究の現状:多様な研究手法からのアプローチ

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 B会場 (萩)

世話人:今野浩太郎

18:30 〜 19:00

[W09-01] モンシロチョウの極めて大きな比成長率(成長速度)が決定づける世界的大害虫としての性質とスジグロシロチョウとの競合関係および食草決定

◯今野 浩太郎1 (1. 農研機構 生物機能利用研究部門)

モンシロチョウ属のチョウは北半球各地で同所的に数種類ずつ生息し普通に見られるものが多く、幼虫は広範なアブラナ科植物に産卵し成長できる。中でもモンシロチョウはキャベツで大発生し大被害を与える悪名高い世界的大害虫であり、世界の温帯各地では最も多く発生している昆虫種の一つであるとともドーバー海峡などを大挙して渡るなど移動性も大変に高く世界各地に侵入し大繁栄している。本講演ではこのようなモンシロチョウの性質が、モンシロチョウが持つ幼虫期間平均で毎日倍以上に成長するという極めて大きな比成長率(毎日自分の体の何倍の体重増加があるかという指数、成長速度の指標)で説明できるという発見と、さらに日本・東アジア各地の自然生態系に普通に生息し各種野性アブラナ科植物を食べているスジグロシロとモンシロチョウがキャベツなどの栽培植物や野生植物で比成長率の差と天敵寄生率の差によってどちらが他者を競合競争排除するかということから食草が決まることを定量的・数理的に予測できることを紹介したい。
文献:Konno K (2023) Scientific Reports 13: 9697.