日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W09] モンシロチョウ属の種間関係と食草との関係に関する研究の現状:多様な研究手法からのアプローチ

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 B会場 (萩)

世話人:今野浩太郎

19:30 〜 20:00

[W09-03] モンシロチョウ属3種のチョウの比較生態学

◯大崎 直太1 (1. 大津市)

関西では、モンシロ属のチョウは、モンロ、ヤマト、スジグロの3種がいて、いずれもアブラナ科の異なる植物に産卵し、「産み分け」をしている。しかし、どの幼虫も3種が利用しているどの植物でも育ち、産み分けの要因を、化学的共進化仮説では説明できない。しかし、天敵不在空間仮説で説明できた。
 モンシロ属の最大の天敵はアオムシサムライコマユバチで、モンシロ属幼虫1〜3齢に産卵し、コマユバチの幼虫は、モンシロ属5齢幼虫から脱出して蛹化する。モンシロ属幼虫は蛹になれずに死ぬ。
 そこで、モンシロは羽化地から数キロ移動し、コマユバチのまだ来ていないと思われる若いキャベツ畑に逃げて産卵する。ヤマトは他の植物に覆われたハタザオ属植物に隠れるように産卵する。スジグロは幼虫体内でコマユバチの卵を血球包囲作用で殺す。
 血球包囲作用は先天的免疫反応で、モンシロとヤマトはコマユバチとの共進化で免疫反応を突破されて逃げ回る生活になった。スジグロはコマユバチと共進化するほどの数がいなかった。その原因は、スジグロはモンシロやヤマトに求愛行動の段階で繁殖干渉されて、個体数が少ないと思われる。