日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W10] DNA配列データ解析を始めてみようII

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 C会場 (白橿1)

世話人:横井翔

18:30 〜 19:00

[W10-01] QTL解析によるカイコのフラボノイド吸収を仲介するグリコシダーゼの同定

◯和泉 隆誠1、平山 力1、冨田 秀一郎1、飯塚 哲也1、桑崎 正剛1、上樂 明也1、坪田 拓也1、横井 翔1、山本 公子1、瀬筒 秀樹1 (1. 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

鱗翅目や直翅目の一部ではフラボノイドの吸収と組織への蓄積が観察されているが、その分子メカニズムはよく理解されていない。カイコやその野生祖先種のクワコはその例であり、クワ葉からフラボノイドの一種であるケルセチンを取り込んで絹糸腺に蓄積し、それによって黄色の繭を形成する。本研究では、繭層のフラボノイド量を対象形質としたQTL解析から、カイコのケルセチン吸収において重要な役割を担う加水分解酵素Glycoside hydrolase family 1 group G 5 (GH1G5)を同定した。GH1G5ノックアウト変異体を用いた解析から、GH1G5は中腸内腔においてクワ葉由来のケルセチン配糖体から親水性の高い糖部分を脱離させることによって、ケルセチン吸収を仲介していることが示唆された。GH1G5の欠損変異は繭色を白化させるが、GH1G5の機能欠損ハプロタイプは調査した白繭カイコ系統の63%に保存されていたことから、カイコの白繭化において重要な役割を果たした変異の一つであることが示唆された。本集会では上記の研究について、使用したバイオインフォマティクスツールの紹介などを含めつつ発表したい。なお本研究は、農林水産省委託プロジェクトJP22680575の補助を受けて行った。