18:30 〜 19:00
[W10-01] QTL解析によるカイコのフラボノイド吸収を仲介するグリコシダーゼの同定
鱗翅目や直翅目の一部ではフラボノイドの吸収と組織への蓄積が観察されているが、その分子メカニズムはよく理解されていない。カイコやその野生祖先種のクワコはその例であり、クワ葉からフラボノイドの一種であるケルセチンを取り込んで絹糸腺に蓄積し、それによって黄色の繭を形成する。本研究では、繭層のフラボノイド量を対象形質としたQTL解析から、カイコのケルセチン吸収において重要な役割を担う加水分解酵素Glycoside hydrolase family 1 group G 5 (GH1G5)を同定した。GH1G5ノックアウト変異体を用いた解析から、GH1G5は中腸内腔においてクワ葉由来のケルセチン配糖体から親水性の高い糖部分を脱離させることによって、ケルセチン吸収を仲介していることが示唆された。GH1G5の欠損変異は繭色を白化させるが、GH1G5の機能欠損ハプロタイプは調査した白繭カイコ系統の63%に保存されていたことから、カイコの白繭化において重要な役割を果たした変異の一つであることが示唆された。本集会では上記の研究について、使用したバイオインフォマティクスツールの紹介などを含めつつ発表したい。なお本研究は、農林水産省委託プロジェクトJP22680575の補助を受けて行った。