日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W11] 生物振動学:基質振動と非接触振動によるコナジラミ類の行動制御と防除

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 D会場 (白橿2)

世話人:高梨琢磨、立田晴記、関根崇行

19:00 〜 19:30

[W11-02] 振動によるコナジラミ類の密度抑制機構の解明と実用化に向けた取組み

◯冨原 工弥1、小野寺 隆一2、高梨 琢磨3 (1. 兵庫県農技総セ、2. 東北特殊鋼、3. 森林総研)

演者らは、オープンイノベーション研究・実用化推進事業において、振動を植物に与えることで、コナジラミ類をはじめとする微小害虫の密度を抑制するための研究開発に取り組んでいる。振動を利用した害虫の密度抑制効果には複数の要因が関与しているとされる。そこで、吸汁や産卵行動の抑制に関わる定着阻害効果に着目し、植物体に振動を与えて成虫を飛び立たせ、粘着板で捕獲する方法により評価を行った。また、雌雄間の配偶行動の抑制に関わる交信阻害効果にも着目し、振動を与えた植物体上における雌雄間の振動交信の詳細を、レーザドップラ振動計を用いて評価を行った。その結果、密度抑制機構の解明に繋がるいくつかの知見が得られたので報告する。同事業では上述のような基礎的な知見の収集に加え、トマトのコナジラミ類を対象として、東北特殊鋼(株)の磁歪式振動発生装置を用いた実証試験を行い、実用化に向けた研究開発を進めている。兵庫県ではトマトに加え、イチゴへの応用も検討しており、これまでに「すす病」により葉や果実を汚染するオンシツコナジラミの密度抑制効果についても検証してきた。また、振動がアザミウマ類やハダニ類の行動を制御する結果も得られており、本技術は多様な作物や害虫種へも展開可能な汎用性が高い技術であると考えられる。