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[W13-01] ノハラカオジロショウジョウバエ日本集団の生殖休眠の地理的変異
温帯から亜寒帯に生息する昆虫の一部は、冬期に生殖休眠を誘導する。休眠の誘導には、主に光周期(日長)と温度の相互作用が影響することが示唆されている。ノハラカオジロショウジョウバエは日本全国に生息し、先行研究では、北海道と沖縄由来の系統間で休眠誘導に顕著な違いがあり、休眠に関わる形質には地理的変異があることが示唆された。しかし本種が、気候が異なる日本列島の様々な環境に適応してきた過程を明らかにするためには、本州や九州を含むより広範な地域に由来する系統を用いて休眠誘導条件を精査する必要がある。本研究では、各地の集団に由来する21系統について、異なる温度における長日・短日条件下での生殖休眠の状態を観察した。その結果、温度と光周期の影響は地域によって異なり、本州及び九州の集団は温度によっては長日条件でも生殖休眠を誘導することがわかった。このような温度への反応性の違いは、生息地域の気候において適応度を最大化するために調整された結果であると考えられた。休眠誘導に大きな地域差があるにも関わらず、ゲノム解析結果からは、地域集団間の遺伝的分化は小さく、集団間で分化しているゲノム領域はごく一部であることが示された。