日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W14] 応用昆虫学の新しいチャレンジ:腐食性昆虫が支える未来の資源循環社会

2024年3月30日(土) 18:30 〜 20:00 G会場 (小会議室8)

世話人:霜田政美、劉家銘

19:00 〜 19:30

[W14-02] アメリカミズアブ幼虫が持つ長期飢餓耐性の発見とその利用

◯大原 裕也1 (1. 静県大・食品栄養)

アメリカミズアブ(Hermetia illucens)(以下ミズアブとする)は双翅目ミズアブ科に属する完全変態昆虫である。ミズアブの幼虫は幅広い食性を示すことから、近年、ミズアブ幼虫に未利用資源を餌として与え、飼料や食料として活用可能な昆虫由来のタンパク質や脂質を生産しようとする機運が高まっている。しかし、ミズアブの発育過程に関する記述は断片的であり、ミズアブの発育プログラムは栄養等の個体を取り巻く環境に応じてどのように調節されるのかは不明である。そこで本研究では、ミズアブ幼虫における栄養環境応答的な発育調節の詳細を明らかにすることを目的とした。その結果、ミズアブ幼虫では体重増加に伴い飢餓耐性が高まる傾向が見られ、体重が2 mg以上に到達した幼虫は絶食状態であっても4か月以上生存することが明らかとなった。さらに、4か月間絶食状態で飼育した幼虫を富栄養状態に戻すと、成長を再開し正常に成虫まで発育した。これらの結果は、ミズアブ幼虫は数か月間の絶食状態であっても再度発育するポテンシャルを保っていることを示している。現在、機器分析などを駆使しミズアブ幼虫の飢餓耐性を支える分子機構を解析しており、今後、長期飢餓耐性を基盤としたミズアブ幼虫の保存技術を開発していきたいと考えている。