The 84th Annual Meeting of the Entomological Society of Japan・The 68th AEZ annual meeting

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Workshops

[W16] 第4回社会性昆虫研究会:social material exchange in antsー栄養交換と栄養卵

Sun. Mar 31, 2024 5:00 PM - 6:30 PM Site B (Hagi)

世話人:藤岡春菜、Adam Khalife

5:30 PM - 6:00 PM

[W16-02] トビイロケアリの蟄居型コロニー創設:女王による "身を削った" 子育て術

◯Satoshi Miyazaki1, Yuta Kurihara1 (1. Tamagawa Univ)

多くの真社会性ハチ目では新しいコロニーを創設する際、交尾後の新女王が単独で営巣、産卵し、女王自らが巣外に出て餌を集めることで、孵化した幼虫をワーカーに育て上げる。一方で多くのアリでは、女王は巣に籠ったまま、自ら餌を食べることなく自身の貯蔵栄養を餌に転用して育児に用いる(蟄居型創設)。こうした創設の過程で、胸部を通る食道が袋状に膨れることが数種で知られ、「胸嚢」とよばれるこの部分に液状の餌を貯えると考えられてきた。本研究では代表的な蟄居型種であるトビイロケアリLasius japonicusを主な材料とし、胸嚢の形成と液体貯蔵のプロセスを調べるとともに、胸嚢内容物の餌としての貢献を確かめた。トビイロケアリ女王による蟄居型創設は交尾後6週間で完了するが、最初の3週間で胸部に備わった飛翔のための筋肉が分解された。続いてその筋分解で生じた空隙を埋めるように、胸部を通る食道が背方に向かって肥大し、袋状の胸嚢が形成された。その胸嚢には黄色の油性の液体が貯蔵されていた。続いてこの貯蔵液体を実験的に除去したところ、仔の数が減少したことから、この液体が餌として利用されることが確かめられた。以上の結果に基づき、蟄居型コロニー創設における“身を削った”子育て術について議論したい。